定年退職に向けた心の準備

良い人生をおくる、幸せな老後を、豊かに、賢く・・・。

定年退職とは、いわばスーパーヒーローが戦闘スーツを脱ぐのと同じようなものです。
それは、産業や企業、個人の職歴から、あなたのアイデンティティを剥離して、まったく新しい人生のステージに入る、ということなのです。

自由や興奮、ずっと待ち望んでいた出来事があるでしょう。しかしそこには、人生の転機の鍵や、それに対する適合力、中には、全く予期していなかった出来事も含まれていることでしょう。

定年退職は精神的な挑戦が必要とされる、人生に於いて最も重要なステージの一つなのですが、通常退職に関するアドバイスというのは、感情面でなく、財政面に焦点を当てています。両方に関するプランを練ることが、後に相当な違いが生じさせることでしょう。

では、定年期にさしかかるにあたって直面する変化には、どのようなものがあるのでしょう?

定年後は、仕事をしていた間に私たちの多くが夢見ていたような時間が優雅に広がります。旅行に出かけたり、ずっと読みたかった本を読んだり、新しい趣味を見つけたり好きな事に没頭したり、、、幾つかの行動にはお金もかかります。そして殆どのものには、前向きな気持ちやチャレンジすることを愛する姿勢が必要とされます。これら全てのことは、定年退職によってもたらされた”時間”、そして、それに関わる事に繋がっています。

しかし、定年退職には難点も付いてきます。ロバート デラモンタギュー氏は著書である”The Retiring Mind:リタイアに向けての心の準備”の中でこう告白しています。「リタイアしてからは、人生の中で初めて答えが見つけられなかった。まるで、道しるべのないブラックホールの中に落とされたような気分だった。自分に一体何が起きたのか、、、自分で会社を築き上げて成功し、とても躍動的かつ勢力的な人生を送って来たというのに、次に何をすればいいのか全く分からなくなった。25年目にして初めて、管理する会社が無くなり、緊急処置が必要な作業も無くなった。何よりも辛かったのは、決断を下したり議論を交わすのに、誰も私を必要としなくなった事だった。ゴルフもやらないし、クラブにも属していない、どちらに対してもやる気なんて起こらなかった。」

定年後の生活への挑戦は様々です:
自分のアイデンティティの変化や、今迄仕事で満たしてきた時間をどう扱っていくかの対処法、世間から”定年”というラベルを貼られること、もう必要とされなくなった、と思う気持ち。仕事、企業や同僚が居なくなった事で、自分が何者なのか、どこに属せばいいのかを確認でいなくなる、等。 定年を迎えたことによって、自分の目的意識を失いやすくなってしまいます。

定年がゴールなのか、または予期できなかったカーブボールなのか。精神的、及び財政的な観点からみた定年計画を練る事が大事な鍵となってきます。例えパートタイム枠であっても、収入額が減っても、プレッシャーが軽減された環境内や関連会社で定年後も仕事を続ける人達もいます。

多くの退職者は、ボランティアとして何かに関わる事を選んでいます。オーストラリア国内の34%の成人が、コミュニティ組織内で毎週少なくとも1時間の割合でボランティアを行っているという調査結果が出ています。

その他では、新プロジェクトを立ち上げたり、習い事を始めたり、幼い子供を育てる家庭を助ける事を始める人々もいます。

退職に向けて新しい道を計画することは、自分達の価値について考える必要性をも意味しています。引退後に行うその事柄が、自分が本当に価値があるものだと感じられるものならば、きっとそこから満足感を得られることでしょう。
例えば、お孫さんの世話をするのは素晴らしいことです。でも、どのくらいの時間なら幸せを感じられるか、それを前もって決めておくのが大切です。リラックスするのが好きだから、という理由でビーチハウスを買うのなら、それもまたよい考えでしょう。

定年退職を前向きに考えることは重要なゴールですが、想定しているような自然な成り行きでその考えが自分に巡ってこないかもしれません。心理的影響を安易に捉えないこと、これが計画を立てる際に多いに役立つのです。

本物の価値を感覚で得た価値と区別することは、定年期への移行に役立つことでしょう。そうして、待ち望んだ素晴らしい老後を送ってください。